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10月
「教訓1」
歌・加川良

今年はほとんど何処にも出向かず、地下スタジオで録音作業をしています。だから、すぐに煮詰まる。そんな時はネットを利用して小樽をはじめとする、気持ちのよい海風が吹く街のことを調べるのです。ぼくが訪れたことがない場所、それは内外問わず、たくさんあります。素晴らしい琵琶湖と、ひこにゃんが有名な滋賀県も知らないなぁ‥。なんて思っていたら、その土地がフォーク・シンガーの加川良さんを生んだと知りました。
失礼ながら、ぼくは加川さんの歌の数々を忘れていました。すべてのアルバムを聴いてみました。驚きました。一貫した歌へのスタンスに驚いたのです。加川さんは、「怖かったら逃げなさい、隠れなさい」と歌われています。そして「死んで神様と言われるよりも、バカだと言われましょうよ」とも。脚本家の山田太一さんもそうでしたが、人間の「弱さ」や「哀れさ」に真正面から対峙すること、絶望すること。そういうことを愛でる作家って少ない。ぼくの好きな1970年代という時代は、しらけて長髪で項垂(うなだ)れていました。今って項垂れることもできない。現実から逃避した「推し」の世界に潜り込んでいるよう。大事な感情って、日々の生活の中から立ち現れるもの。逃避ではなく、ちゃんと怖がったり、項垂れたりすること。加川さんの歌を聴いて、改めて学びました。
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