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2月
「激しい風と白い空」
歌・ブルース・コバーン

高校時代、街の繁華街に「紳士服のタカキュー」という老舗の洋品店があって、よく覗いていました。でも、それは服を買 う目的ではなく、雑居ビルの階段を上った先に、無造作に置かれたダンボール箱があったからです。箱の中には、古いレコード盤が乱暴に投げ込まれていました。洋品店の方は、誰かに頼まれて仕方なく預かったのだと思いますが、ぼくにとっては宝の山でした。一枚、どれも500円ほどだったと思いますが、日曜日になると、ぼくはそこに通い、名も知らぬ音楽家のレコード盤をたくさん買いました。奇跡的に、そのほとんどが素晴らしい内容だった。「ぼくの音楽:冬」などと、勝手に呼んでいましたが、そこで、エリック・アンダーソンの『ブルー・リヴァー』、ランバート・アンド・ナッティカムの『アット・ホーム』、ジョニ・ミッチェルの『ブルー』などのアルバムと出会いました。決定的だったのが、ブルース・コバーンの名盤『雪の世界』。ぼくが購入したものは国内・中古盤で、解説はシンガー・ソング・ライターの中川五郎さんが書かれていて、帰宅後、取り憑かれたように聴き、一晩中、五郎さんの対訳を読み込みました。そして朝を迎え、ぼくは「はっ!」としました。浦島太郎のように、年をとってしまったのです。ブルースさんの「雪の音楽と言葉」が、ぼくを青年から老人に変えてしまったのでした。
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